No.383 ボーダー・ストライプ

 

 

彼はボーダー・ストライプ

網目状に切り裂かれた男

背は低く ひどくしゃがれた声をしていて

誰よりも 優しく強がる男

 


彼は甘い紅茶を好んで

二段ベットの下の段の 下を好んだ

何度言っても布団には入らずに

埃まみれで起きて来て 外に出て払った

 


彼は痛みを誤魔化すように

良く笑って「いや 平気さ」と言ってみせた

たまに 網目状の傷から

ほんのり血が出ていようと 強がった

 


彼はボーダー・ストライプ

翼の生えない天使のような男

血色は悪く ひどく傷んだ髪をなびかせて

誰よりも 風を受け止める男

 


彼は苦い経験を積んで

十三階段を登ったことを思い出して

その度に震えて 涙を拭いて

埃まみれになるために 暗闇に篭った

 


彼は痛みを誤魔化しながら

良く笑って「 いや 悪くはないさ」と言っていた

やけに 網目状の傷が腫れていても

脈打つ血管が破裂しそうでも 強がった

 


彼はボーダー・ストライプ

友人よりも大切なことを教えてくれた

彼はボーダー・ストライプ

家族よりも信じることをためらわない

 


彼はボーダー・ストライプ

夢にまで出て来て 身を呈してくれた

彼はボーダー・ストライプ

夢から覚めた時に 一番近くに居てくれた

 


笑わないで 最後まで話を聞いてくれた

いつの間にか 笑わせてくれていた

彼はボーダー・ストライプ

傷を受けて その傷で地図が描ける男