No.595 テフロン!

 

 

彼の顔はいつもよりテカテカしていた

それもそのはず 今朝テフロンを塗り過ぎた

強くなった気分で誰かに怒鳴りつけても

硝子で出来た心臓は変わらない

 


彼は熱くなり 顔の上で目玉焼きを焼いた

パンの上に乗せて食べれば そこそこの味だ

ベーコンは もうこんがり焼けている

怒鳴りつけた誰かは とっくに居なくなっている

 


とりあえずムシャクシャしていた

全てがテフロンのせいで狂ってしまった

時計も 方向も 思考も 視線も

くるくると回りながら一点を指さなかった

 


テフロンを塗らなくても

それほど変わらない一日だったろう

彼は卵を焼きたくて仕方なくなった

今度はスクランブルエッグにしてやろうと思った

 


次の日の朝 彼はシェービングクリームを

グビグビと飲み干して 気絶してしまった

テフロンは洗面台の上で その様子を見ながら

今度はもっとまともな人間に塗られたいと思った