No.281 少年と磁石
反発する磁石を
少年は親指と人差し指で摘む
力をどれだけ入れたとしても
弾けて裏返るのが結末だ
少年は 友達が少なかった
親友などには 夢でさえ会えない
友達という言葉に嫌気が差すほど
話をするのも 聞くのも 苦手だった
そんな少年は
家に帰って 磁石を付けようとする
同じ極を 毎日 毎日 毎日
繰り返し 親指と人差し指で摘む
少年がやりたかったことは?
意味の無い遊びだったのだろうか
同じもの同士がくっ付かないことは
少年の周りにも 溢れるほど多かった
少年と同い年 同じ学校
次男で我儘 ピーマンが嫌い
ここまで同じなのに
あいつと喧嘩ばかりしているなぁ
同じことのように感じた
少年は不思議でたまらなかった
磁石は違う同士がくっ付く
少年の周りには 消え入るほど少なかった
どのみち くっ付くことの方が少ないのだ
少年は諦めなかったが 結果は変わらない
それで良いと思えるようになった時には
とっくに少年は少年と呼ばれなくなっていた