2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

No.311 カスタネットとタンバリン

カスタネットの靴を履いて カツカツカツカツ歩いている男 彼が俯くと 良く答えてくれた 彼がイヤホンをつけると 程よく答えた タンバリンの服を着て タンタンタンタン背中をかく男 彼が俯くと 背中が答えて 彼が仰け反ると 腹が答えた 彼らが友人になるには …

No.310 電車の喘ぎ声

何が悲しくて電車が軋む度に喘ぎ声を連想するのだろうと彼は思った 性格の悪いエアコンが汗をベタつかせて更に苛立った 彼は昨日見た楽園の夢などを思い出せるように目を閉じた 彼には全てが気に入らない 彼には全てが鬱陶しい 楽園には彼一人だけだったが煩…

No.309 心音

二つの心揺れ動き 矛盾だけでは収まらず 絡み合うのは夜明け前 朝が誰かを殺す音 頭を撃たれ倒れても 矛盾だけでは収まらぬ そこから生えた心には 誰かの音が遺される 餓鬼の遊びの延長に 無常だけでは言い知れず 心が何処に在るかすら わからぬままに時が経…

No.308 不死鳥の刺青

彼の両手の中へ 座り直した猫がゲロを吐いた 両手を塞がれてしまったので 仕方なく足で猫を退かした 彼は絶望的な夢から覚め 汗だくだった その上 部屋にはすえた臭いが充満していた 絶望的なのは現実だけにしてくれと 誰かに言ってやりたかったが 彼の周り…

No.307 nap

服が風を切る音が聞こえる うたた寝をしそうな日差しの中 バイクの振動は 小気味よく彼の鼓動をなだめ 重たく 素っ気なくなる 目蓋を閉じる 彼が目を覚ますと 運転していた友人がいなかった ホテルの受付で何やら話している 彼はまた目を閉じた 風が額を擦り…