No.491 ケンゾー

 

 

ケンゾーは 確かに嘘を吐いた

しかし だからといって あんな目に合うとは

ケンゾーの吐いた嘘は なんてことはない

誰もが一度はついたことのある嘘だ

 


あんな目にあっても ケンゾーは生きている

それが何よりも ケンゾーにとっての苦痛だ

変われるものなら変わってやりたい

そんなことを言う奴は 一人もいなかった

 


ある仕事を頼まれて 失敗してしまったツケだ

回ってきたのは 当たり前だったかもしれない

でも あんな姿になるまで あんなことを

元には戻せない ケンゾーが一番知っている

 


失敗だって 大したことではない

相手が違っただけだ しかもその相手が

大事な顧客だったなんて 知らなかっただけだ

嘘を吐いても吐かなくても 死人は蘇らない

 


蘇らないのなら まあ仕方のないことだ

ただ ひと思いに頭を撃ってやれば良かった

ケンゾーは今も 何処かに隠されてしまった

腹の中を ひたすら探して 気分が悪くなっている