No.480 怪獣の王様!!

 

 

プラスチックで出来た小さなヘルメットで

5歳の彼はカルト映画のヒーローを熱演した

死神に似ていて 怪人とも言える

崩壊しそうなビルを 両手で支える力持ちだ

 

 

怪獣は彼の友達で 本当の敵は人間だ

(親切そうに見えても 誰も信じちゃいけないよ!)

強烈なキックは 奴らのために取っておこう

(カルト映画のヒーローは狂ってなきゃいけないよ!)

 

 

記憶喪失のフリをして 知らないおばさんの家へ入った

彼の目当ては決戦のための口紅と

透明になれそうな衣装を探すことだった

幸い おばさんは帰って来なかった

 

 

(何故おばさんの家とわかったかって?

 簡単だよ!自転車で出かけたのを見たんだ!)

クライマックスは午後5時半 家に帰る時間

(家族に心配はかけちゃいけないからね)

 

 

河川敷に群れた少年たちは彼を見て牙を剥いてきた

(今だ!)怪獣たちは一斉に少年たちを食った

彼は誇らしげに夕日を眺めていた

プラスチックのヘルメットはキラリと光っていた

 

 

彼がクソみたいな大人になる前に

この時の彼の誇らしげな笑顔を覚えておいてくれ

カルト映画しか摂取出来なかった悲しみなんて

そんなものはない 彼には巨大な友達がたくさん居る