No.285 誰か

 

 

(二日酔いのような体調で目覚めた

酒なんて一滴も飲んでいなかった

彼は遠くの街で実家の仕事を継いだ

私は私で何かを始めようとしている

 


先月は7日間を1000円で過ごした

パンの耳に砂糖をかけて食べた

穴の空いた障子から見える景色が

やけに浮かれている気がした)

 


そんな誰かを想像ばかりしている

現実はもう少しましに過ごしている

過去を掘り当てると宝のような貧しい日々

哀れむ人も傍に寄り付かない日々

 


水滴を残して その日々は過ぎた

その水滴はたまに頭の湖に零れる

そうすると音は響きわたり 波紋を作り

それがわかるとまた誰かを作る

 


(一体何から始めたら良いのだろう

まともに考えることも出来ないでいた

始めようとしているだけで偉いと

学校の先生に言われた と嘘をつく

 


言い訳は私の特効薬になった

ソファベッドはいつも同じにおいがした

くだらない番組をやる時間ではないので

何となく目をつぶると深夜に目覚めてしまった)