No.489 雨の日の一服

 

 

スーパーの前にある排水のための溝蓋から

逆流した水が ぶくんぶくんと 泡を立てていた

それを見ながら煙草吹かして やらなくて良いことと

やらなくてはならないことを脳内に配列した

 


灰皿は人目に付かない所に置かれていた

スーパーの上にある駐車場へのエレベーターの裏

他の人々と隔絶したような気分がして

少し心地よく 少し心細かった

 


店内を見てみると 陳列された商品が

カラフルに手を振っているので 気分が悪かった

買われないものと買われるものの差を考え

考えたこと自体も腹立たしく思った

 


雨が強まっている もう梅雨なのだろうか

季節はもう何回も巡って来ているのに

はっきりとした変わり目を測ることが出来ず

いつも置いてけぼりを食らっている気がした

 

 

知らない子供がそばへ来て 溝蓋に立つ泡を見て

言葉にもならない 拙い驚きと感動を発した

その言葉がどういう意味かを考えるよりも

煙草の煙の行先だけが 気掛かりだった