No.367 穴空き坊主に風が吹く

よそうしゃもじに穴が空く
茶碗の底にも穴が空く
たまげた坊主が土捏ねて
粘土細工の茶碗を作る


歪な茶碗はすぐに割れ
白飯も茶色くなる始末
あきれた坊主は金槌で
鋼鉄細工の茶碗を作る


硬い茶碗は口を切る
白飯も真っ赤になる始末
懲りない坊主は息を吐き
硝子細工の茶碗を作る


鋼鉄よりも口が切れ
白飯はどす黒くなる始末
あわれな坊主は土捏ねて
粘土細工の茶碗を直す


そうしていつまでも塗り直し 塗り固め
茶碗はみるみる大きくなって
内側も箸で凹み 削れて 白飯の量が増え
坊主はぶくぶくと太っていった


よそうしゃもじに
二つ目の穴が空く時 流石の坊主も諦め
翌日からはフランスパンで
味噌汁と焼き鮭を食らう始末