No.104 顔のない僕

 

何者でもないと嘆く時

何者かが僕を戒める

「格好良くない みっともない」

それじゃ僕は行き場がない

 

何事でもないと信じても

何事かは起こり続けて

「愛想良くない 君を見たくない」

それじゃ僕が生きられない

 

小さな小さな 部屋に閉じ込めた方が

簡単に素直に楽になれるのに

大きな大きな 世界というものの方が

難解に複雑に魅力的に思う

 

何にでもなれると言われても

何にもなりたくない僕は

「わかりあえない 伝えられない」

それじゃと言って去りたい

 

 

No.103 陰干し

 

疑問符ばかりが張り付いて

君の顔は強張っている

跡形もなく消し去りたい

その疑問符を剥がしたい

 

やけに思い出が重なるから

ミルフィーユのようにフォークで切って

その切り口の見事さを笑って

君と平らげてしまいたい

 

君に出来ることを数えて

僕が出来ないことを数えて

数え終わらないうちに飽き飽きして

部屋に閉じこもっている二人がいて

 

物干し竿から顔を覗かせる

ぬいぐるみが親しげに問いかける

「笑った顔はどこへ行ったの?」

畳んでしまった洗濯物の中

 

ハンガーに袖を通した衣類

まだ畳まれていない新しい思い

君が笑った顔のデザインを

今は暗がりで探している

 

 

 

 

No.102 宙に浮かんで

 

酒に頼ることも出来ずに

自堕落を気取ることも出来ずに

ただただ寝れずに図に乗るばかり

だらだら汗だけ垂れている

 

矛盾は無限に広がってゆき

やがて覆い尽くす満天の星

夢見るだけ夢見た後は

夢見たことを恥じている

 

もっと単純におろそかに出来たなら

僕は君を真っ直ぐ見つめられるだろう

大切で痛切な気持ちも殲滅する

兵隊たちの口笛が頭の中で鳴る

 

僕は君に何を言えば良いだろう

僕は君に何を見せれば良いだろう

考えて考えて 矢継ぎ早に次の言葉

宙に浮かんで シャボン玉のように___

 

弾け飛んでしまったら

眠りについた君を覗いたら

頭の中まで見えてしまいそうで

僕が考えた君の考えを解いた

 

苦しい気持ち 宙に浮かんで

優しい心 宙に浮かんで

遣る瀬無い時間 宙に浮かんで

僕はただただ 宙に浮かんで____

 

やがて弾けて消えるまで

 

 

 

No.100 8/6

 

白と黒では決められない
偽善の色は透明な灰色で
吐いて捨てるような煙と
包まれた布のような言葉

 

太陽に照らされて火照る
アスファルトに手を当て
目玉焼きを頭の中で作る
熱さと痛みは歪んでゆく

 

どうしようもない人々の
どうしようもない気持ち
何を考え何を感じている
何に怯え何に狂わされる

 

痛みはやがて朽ち果てて
時とともに忘れさられて
鉄錆のような傷跡だけが
諦めたように佇んでいる

 

鍵を開けてもう少し中へ
進んで行けば暗がりに光
時とともに新たな鼓動が
何かに呼ばれ答えている

 

No.99 地面の穴

 

儚く崩れる地面

奈落を覗き込めば

輝く思い出たちが

暗闇を照らしている

 

飛び込めばもう戻れない

時間が止まり動けない

躊躇する間も無く

足は沈み埋もれてゆく

 

駆け出すと地面の穴は

遠く離れていった

振り向くとそれは

ただ陽炎のように揺れて

 

あの暗闇を恋しいと感じて

あの奈落に落ちたいと望んで

時間など止まれば良いと

星空を眺めながら呟いた

 

沈みゆく地面を探して

彷徨う彼は 人形のように

心を何処かに隠して

いつしか忘れ去られた

 

彼は一人きりで歩き

死んだ思い出たちを数えて

地面をひたすら踏み歩き

落ちてしまえと俯いた

 

No.97 街

 

なんやかんやで 辿り着いたら

そこは東京 眠らない街

とは程遠い 眠る街並み

山がそびえる 鳥は鳴き出す

 

虫の音色に 寝つきは悪く

犬の遠吠え 寝起きも悪く

緑と青の コントラストが

うざったいから 目を閉じている

 

狡い言葉を くれた貴方に

あげる言葉は 「全て彼方に」

飛んでいったよ 右から左

どこへともなく 左から右

 

慰めてから 貶す言葉で

全て無かった ことにしたって

慰められて 貶されたから

不安に怯え 溺れ震える

 

ここじゃないどこかなんて

君がいなければ不安定

だから一緒に眠ろう

だから一緒に語ろう

 

どこでもない場所なんて

君がいなければ無関係

だから一緒に落ちよう

果てし無く落ち続けよう

 

 

 

 

No.96 パーツ

 

奪われた物は全て数え
与えられた物を全て捨て
夢みたいな言葉を重ねて
憂鬱なことは全て忘れ

 

辞めちまいたい 僕を仕舞いたい
嘆きの燻製 煙草に火を点ける
冷めちまいたい 僕は発火して
過激な恒星 燃えて光り続ける

 

盗まれた物を全て数え
盗んだものは全て売り飛ばし
夢みたいな心をかわして
憂鬱なことは全て燃やして

 

あげちまいたい 僕をラッピング
破滅の銃声 煙草に穴があく
ズレちまいたい 僕ははぐれ者
なれずに防戦 盾は燃えて落ちる

 

はめちまいたい 僕を押し込んで
この世の純正 部品は国産だ
一緒にいたい 僕は誰の物?
これから混成 部品は沢山だ