No.579 彼の爪!
爪が伸び過ぎた彼
爪切りを探しても見つからない
ハサミで切ろうとしたが
ハサミが欠けてしまった
ハサミは彼を責め立てた
彼の寝ている隙に
髪を切ってしまおうと思った
実行には移さなかった
爪はすくすくと育って
可愛くて仕方がなくなった
彼のお気に入りのクリームを
爪に塗りたくると だんだん曲がってきた
彼が塗ったクリームは とても強く
爪の心を折ろうと必死になった
爪は彼に心配させないように
作り笑いで 強がってみせた
爪が最後の悲鳴を上げて折れる時
彼は顔を洗っていた
傷だらけになった顔の前に差し出した
深爪の指たちを 彼は寂しそうに見つめた