No.381 隙間に入り込んだ男

 

 

貧乏揺すりのしすぎで右足がズレる

待ち焦がれていたあの人はもう来ないだろうと

落胆する心を抱えたまま 灰色に変わる男は

そのせせこましい性格を 自分で踏みつける

 


アルコールが足りない

もう少し待てば 夜になる

夜になったら 皆気にしない

アルコールは 夜空まで登ってゆく

 


貧乏揺すりに飽きて 街中を歩き

出来るだけ狭い路地裏を探す

30…20…10…と

cmが勢いを増して彼を圧迫する

 


アルコールは買えない

もう少し待てば 貰えたはずだった

貰った金を全て費やしたので

アルコールは 来月まで逃げてゆく

 


貧乏揺すりをしてみたら

彼以外だと紙くらいしか通れない隙間を

するすると抜けられたので

彼は病みつきになって隙間を探した

 


アルコールは要らない

もう少し経てば 飲むことも出来ないほどに

飲まれてゆく 隙間に 髪よりも薄くなりながら

アルコールは 来世まで取っておく