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No.93 紫煙

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煙草の火 当てた手のひら むず痒い 穴が空くほど 灰皿代わり フィルターを 噛み潰すたび 気が狂う 葉っぱを噛めば 正気に戻る 成人に なる直前は 生きた肺 なった途端に 燻製の肺 日が照った 鉄の熱さで 火を付ける 血の味すると 少し微笑む 栄えてる 街並み…

No.90 ハキダメ処/2

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落書きで 赤のクレヨン 使い切り 黒く濁った 血を描き出して/ 深爪の 痛みで目覚め また眠る 繰り返しても 朝は遠のく/ 蝉の声 五月の晴れに 鳴りだして こびり付いたら 朝にうつむく/ 「忘れない」 この痛みにも 意味がある そう信じても 何にもならず/ 脳…

No.87 ハキダメ処/

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カーテンの 裾からさした 陽の光 浮かぶ埃と 晴れぬ心と/ 夢の中 逃げれば少し 楽になる 悪夢にもなりゃ 覚めて安堵し/ 窮屈な ベッドの上で 苦しがる 横の女は いまだ寝ている/ 飲んでいる コーラを全て 捨てたなら 流しのにおい マシになるかな/ 暗がりに …

No.58 断片集

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布団には 詰まった麻薬 秘めやかにバレることなく 起きることなく 常夜灯 暗がり欲しさ 水欲しさ乾いた喉に 薄暗い糸 画面割れ 顔が二つの 著名人やけにいらつき 電源を消す 小鳥鳴く 電線の上 曇り空感電死した 幻想覗く 今月の 給料袋 破り捨て家計簿捨て…