No.162 ミルクチョコレート

夢の中で食べたチョコレート
ミルクの味が濃かった
何度か食べた味で
「またこれか」と感じていた

 

ピーナッツのような
小さな思い出のかけらと
一人きりのままの自分と
いつかは一緒だった家族が

 

夢の中ではバランス良く
配置されていたから
僕は打ち明け話をした
今の悩みと 生きる意味のこと

 

兄はとても難しい言葉で

僕の言葉を遮って
それから自分の頭の良さで
僕のことを笑っていた

 

夢ではそんな風に思ったけど
起きた時 夢の中の兄の言葉は
冷めた自分自身の言葉で
良く理解出来ることだった

 

母と父が並んで歩き
僕の部屋を見回した
一人で住むには広すぎる夢の部屋を
二人で仲良く見回していた

 

悲しいほどに 切ないほどに
もう戻らない時間を感じた
今も二人が一緒なら
こんな夢は見られないのだろう

 

目が覚めた時 隣に寝ている
僕の家族になってくれた女は
寝相で見せる 美しい素直さで
僕のことを出迎えてくれた

 

二時に起きても することもなく
冴えない頭を抱えてこの詩を書いて
三時になっても することもなく
瞳を閉じておけばまた夢を見るだろう

 

もしその時夢の家族に会えたら
もしその時一人きりの僕に会えたら
言ってやろう 僕はもう家族が出来たと
すがる必要も無いけれど 貶すことも無いと

 

あと何度夢を見ても
あと何度夢から覚めても
相変わらず隣に眠る寝相を
その素直さを あと何度数えても

 

変わることなくそこに在りたい
何処にいたとしても 隣で夢を見たい
変わることなくそこで在りたい
何処へ行くとしても 隣で目覚めたい

 

朝になって それから
のんびりして 昼過ぎあたり
あの夢のチョコレートに似たものを
何処かで買って一緒に食べよう