うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.278

 

 

運を信じない

不運を信じる男が

幸せを感じるには

不幸せになるしか無かった

 

 

DVDのパッケージの向こうから

おどけた顔でコメディアンが挨拶をする

それを棚に戻して 遠くを目指し

手にしたのはスプラッター映画だった

 

 

こっちの方が笑える

笑えない方が笑える

笑わせようと必死になり過ぎると

そこに強要がほんのり混じる

 

 

テレビの前で男は膝を打った

「これだ! 何故こんなに

    簡単なことに気が付かなかったのだろう?」

男は笑いが止まらなくなった

 

 

スプラッター映画を見終わると

しばらくザーザーと音が鳴っていた

何故か再生を終えても回り続ける

DVDを取り出したのは翌日だった

 

 

男はそれをレンタルショップへと返しに行く

コメディアンと同じような顔で

 

 

店内にいたカップルは

ありきたりな恋愛映画を手に取りながら

男のことを見た途端に

気味悪がってひそひそと話していた

 

 

No.277 pudding

 

 

カラメルの海で 蕩けそうな微熱で

匂いを確かめ 海底を蹴った

波打つ底は すぐにえぐれそうだ

ボートがあったら 掬って遊ぼう

 


「見つからないように 落とされないように

   流されないように 必要以上 沈まないように」

空を眺めてれば良い カラメルを飲み込んで

(時間という奴は 何処に行ったんだ?)

 


何処までも潜った 海底の奥まで

地表は遥か彼方 酸素はもう要らない

何処へ着くのだろう? 何が待っているんだろう?

柔らかいそいつは 簡単に解れた

 


どれだけ経ったのだろうか

終わりは予想より 早くやって来た

真っ白な物が 固くて冷たい物が

爪を割っている 指から崩れ始める

 


たゆたう感覚 それ以外は何も無い

乗せられた場所が 何処かも知らずに

此処で良いのだろう 此処がそうなのだろう

魂まで解かれて 柔らかに固まった

 

 

お知らせ

 

今日、Twitterのアカウントを削除致しました。

 

理由は、相互フォローでない人と言い争いになってしまったことと、それについて謝罪などをしないことについて、失礼だとフォロワーさんに言われたからです。

そんなにめんどくさい場所なら、離れたいと思いました。

 

楽しく使っていたTwitterは、最近苦痛でしかなくなって、仲の良いフォロワーさんたちとのお喋りだけ出来たら良かったのにと思ってしまいます。

詩を読んでくださる方、絵を見てくださる方、楽しい時間も沢山あったのです。

 

最近ツイートする機会も減り、自分の言動の軽率さもありますが、たまに呟けば誰かの機嫌を損ねてしまう。

そんなことがあると、もうここにいてはダメだなと思ってしまいました。

 

詩作を続けたいので、はてなブログのみで投稿します。

Twitterの他のフォロワーさんたちにはもう届かないですが、煩先生、申し訳ありません。

 

No.276 白い液体

 

 

くだらないことばかり考えていた

世の中の片隅で歩きながら

ビルはそっくりそのまま 夜に返された

裏側を見るには 登るしかない

 

 

月が見えない夜は

雲をしっかりと眺めて

不穏な気持ちになれたら

明日はきっと晴れるだろう

 

 

瞳を閉じても蠢く虫は

敵ではないと知りつつ

目玉を裏返して 瞬きをする

どこかへ行ってくれと

 

 

電車は時刻通り 駅に着いた

座った座席の下に忘れられた 女の鞄

その周りに白い液体が飛び散っていた

これはどういうメッセージだろう

 

 

くだらないことばかり考えていた

走り出した電車の中でも

草臥れたスーツとコートが

向かいの座席でとろけていた

 

 

No.275 旅人

 

 

旅に疲れた旅人は

足を止めて 少し考えた

彼の故郷は遥か遠く

帰るためには金が足りない

 


元はボーリング場で

今は朽ち果てた所

そこに彼は横たわった

ボールを眺めながら

 


嘘に決まっていた旅への幻想は 

金と共に散った 他に何もない

汗ばんだ首を 落ちていたタオルで拭う

擦り切れそうに固くなっていた

 


ボーリング場から出ると 何処かを目指す

とぼとぼ歩くのに 慣れすぎてしまった

目的は遠く 記憶の彼方へ

目標は重く のしかかる現実の向こうへ

 


苦しみを覚えた 寂しさを抱えた

彼には 秘密が増えていった

ある一歩から始まった 旅を悔やむより

ただ一歩進む方が 楽だと知った

 


さようなら自由と 呟きながら

さようなら日常と 囁きながら

彼は流された 海へと出るまで

その先にある 彼の海は枯れていた

 


ぽつんと一欠片 一瞬の輝き

過去から選んだ 一つの煌めき

星空よりも よっぽど綺麗な光

彼は笑った 笑うしかなかった

 

 

No.274 雪道

 

 

凍てつく空気が突き刺さる

感覚は遠ざかり 意識は冴える

指は真っ赤になって傘を掴む

降り積もる雪がさらさらと落ちる

 


何時間そうしていただろうか

寒さを紛らわすために酒を飲みながら

相手を待ち続けている

ライターの炎で雪を燃やしたいと思いながら

 


しばらくして彼はやって来た 

傘を少し後ろに傾け 私は会釈をした

「何事も順調か?」彼が言う

「それなりに」私は答える

 


金の束を渡すと彼は煙草を取り出した

私はライターで火を付けてやった

そうして数分 世間話をした後

私と彼は歩き始めた 人気のない道を

 


忠実な者には恩恵があると思っていた

彼は真っ直ぐに私を見つめていた

少し笑みを浮かべて立ち止まると

銃を取り出し 振り返った私に突き付けた

 


「何故か なんてことは考えないでくれ」

彼の声はどこか悲しげだった

「私がいつ疑ったでしょうか?」

私がそう言うと 銃声が一回響き渡った

 


彼は倒れた 鮮血が雪を溶かした

私はポケットに入れていた方の手を出した

傘を置いて穴が空いてしまったコートを脱ぎ

寒さの中で凍る彼にかけてやった

 


「何故か なんてことはどうでもいいでしょう」

私はどこまでも失望していた

果てしなく 落胆もしていた

赤が白銀に広がり続けているように

 


煙草を取り出す 肩にかかる雪はそのままに

彼にそうしたように 火を付ける

灰のような雪は振り続ける 私は歩き始める

どこまでも続く道を 人気のない道を 歩き続ける