うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.296 一瞥

 

 

生気を抜かれて 口を開けたままでいる

彼の苦痛を知る者は 一人もいなくなる

電車に揺られて 乗り過ごした駅の数を

数えながら 項垂れて新聞を頭に乗せる

 


古い紙の匂いで 誰かに会いたくなった

彼に会うべき人は 一人もいなかったが

それでも誰かと話したくて 新聞をどけ

周りを見渡せば 誰もいない座席がある

 


座席のほつれを 食い入るように見ては

そのほつれを引っ張り 中身を取り出し

誰かの憂鬱を ほじくり出したいと思い

髪の毛が ぼさぼさになるまで掻き毟る

 


何かがぽろりと落ちた 記憶の虫がいた

踏みつけると大人しくなった 彼は笑い

次の駅で降り コーヒーを買って飲んだ

記憶に甘えるより 苦味で目を覚ました

 


彼は苦痛を受け入れた 知らない街の中

壁に貼られた 無数のモナリザの複写に

一瞥をくれてやると 鞄の鉛筆を取って

わざとらしく 走り書きのメモを残した

 

 

No.295 (タイトル思いつきませんでした)

 

男たちが 彼を標的に仕立てていた頃に

彼は通りすがりの老人に 話しかけられ

「幸福が欲しいなら この本を買え」と

怪しい本を買わされ 困り顔をしていた

 


五千円札と老人は いずこへ去ってゆき

彼は本を パラパラとめくり遊んでいた

男たちが 血眼で彼を探して走り回る頃

彼は呑気に 幸福はどんな物かと考えた

 


あの老人に 彼を幸福にするほどの徳が

あるとするなら 男たちは此処に来ない

彼はそう思って 重い目蓋を閉じようと

頬に手をついて しっかりと欠伸をした

 


驚いたことに 男たちは彼を探し出せず

彼はカフェの奥の方の席で 眠りこけた

本の文は 読めるものが一つもなかった

象形文字のようなもので 彼の夢に出た

 


目が覚め カフェを出ると外は明るくて

彼を探す男たちの影すら 見当たらない

鞄の中の 盗んだ札束の感触を確かめて

幸福をくれる本を片手に 家路についた

 

気まま日記 5/25

 

 

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とても綺麗な夕日が撮れました。

シャッター音が出ないアプリで撮りました。

何を恥ずかしがっていたのでしょうか。

 

この前は、電車の中でシャッター音が鳴ってしまって恥ずかしかったです。

 

さておき、一日の終わりに夕日を眺めるというのは、贅沢なのかも知れません。

夕日が綺麗な今日は、暖かくてとても良い日でした。

 

 

そういえば最近、詩をまとめて、プリントして、どこかへ投稿してみようかと、思っています。

データは出来ているので、給料が出たらポストへ向かいます。

ポストはそれまで、暇を潰しているでしょう。

 

絵も描きたいし、創作意欲は一丁前です。

 

詩を書く時に手が止まる時間が増えた気がします。

あと、修正箇所も増えました。

僕にとって、これは良いことです。

どうにかして、詩を良くしたいんだと思います。

 

次は、どんなものがかけるのか、楽しみです。

 

No.294 喪失

 

 

頭の中に出来た世界が 狂うと彼は語る

脈絡がなく どうでも良いような話だが

そんな彼を見るのが面白くて 女は聞く

くだらない事が 彼らにとっての幸福だ

 


忘れてしまえば良い 今日は何もないと

信じ込ませれば良い 明日は望まないと

相槌を打つ女の瞳が とても綺麗なので

彼は宝石のように 瞳を心の中に仕舞う

 


仕舞った瞳を 見つめる彼の瞳は何故か

小動物のように 怯えて弱い光を宿した

その怯えから 彼の頭の中の世界は狂い

繰り返し 語り続けるようになっている

 


女が 彼の傍で幸福そうに頷かなくなり

頭の中の世界だけで 瞳がこちらを向く

彼は必死で 狂わそうとしてみるものの

至って平常な景色だけが 広がっている

 


彼の名を 女が呼んだ気がして振り返る

また 高すぎる空だけがこちらを見つめ

彼は虚しくなって 頭の中の世界を見る

瞳は確かにそこにある そのはずなのに

 

 

No.293 色事

 

身体中 掻き毟る痕 なぞる指

 

ミミズのように くねらせた跡

 

ふくよかな 頬を掴んで 空を見る

 

布きれ触れて 雲だけ摘む

 

寄り添えば 肩の震えが 伝わって

 

憂鬱に落ち 冷めきる瞳

 

日暮れには 似合わない歌 流す部屋

 

茜の空に 雀が歌う

 

No.292 詩

 

詩は何だろうと考え続けている

以前のように自分が書くものが詩かどうかはそれほど気にならなくなったが

身の周りの情報が少なくなり

他人の詩をほぼ読まない生活に慣れてかなり経ち

自分の中でも描きたいものが何なのかわからなくなってくると

詩は何だろう という考え方が少し変わり

「自分にとって」詩はなんだろうと考える

 

詩はずっと書き続けてきたものだ

かかった時間だけで言ったら 絵よりも長いかもしれない

物書きになりたかったわけでもなく

ただ書かなければいけないと思って書いていた

今はどうにか面白くしたかったり

新しいことをしてみようとする

でもそれはあらゆるジャンルでそうであるように

誰かの後追いになってしまう

それは仕方ないとしても

オリジナリティを信じていたい自分がいる

そこでもがき続けるのだろう

きっと そういう人が山ほどいる

 

自分が書く詩の説明はしたくないけれど

説明を聞いて面白がってくれたりもする

今書いているこの「詩」という詩は

 

ただの言い訳で

 

取るに足らない一個人の思いだ

 

少しわからなくなってきてしまった

僕は 詩を突き放した考え方で書きたいなと思っている

矛盾を飲み込み 無力感や虚脱感や虚無感を突き詰めていたつもりだ

けれど 明確なメッセージなんてものはない

それを入れたらつまらないと思ってしまっている

(そして 詩についての詩を書くと それは詩の説明になってしまっている)

 

説教臭い詩は書けないし 書きたくもない

とりあえず誰かと詩について語り 詩を書きたい

やり取りというものは案外大切なのだなということを感じている

詩は素晴らしいほど野原だ 草以外何も無い

そこに花を植えようとする奴ら

それを全て刈り取ろうとする奴ら

その他いろんなことをする奴ら

そして 呆然と立ち尽くして たまに寝転ぶだけの自分

 

みんな元気かな

自分は まあまあだ

 

詩を書きたいというぼんやりとした何かが

炎にも満たない けれど決して尽きない 何かが

読まれたいという 本当に小さな小さな願いが

実を結び 新たに野原を増やせば良い

 

力が抜けて ふにゃふにゃになり

何を書いているのかすらわからなくなった頃

何かの呪縛から解かれて

良い「詩」というものが生まれてくるかもしれない

 

No.291 game over


銃を片手に乗り込むワゴン

素晴らしい陽気外れた予報

不規則な街に一発撃ち込む

そこから見えた彼らの母校

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長すぎるロードを過ごし

彼らは遅すぎる春を待つ

未来に宛てた過去の手紙

届かなかった夢だけ並ぶ

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コントローラーを 誰かに取られてしまった

選択肢は 沢山あるというのに決められない

俯く彼らのそばにあるものは 退屈な空気と

食い散らかした弁当の残骸と 割り箸だけだ

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そして何発かが 撃ち込まれた後に

彼らは やっと諦められたのだろう

もう遅すぎる レベルは上がらない

セーブポイントも もう意味が無い

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やり直してもやり直しても 同じ結末になる

不規則な街は 外れた予報の中で今日も建つ

HPは赤のままで 点滅を繰り返す瞳の奥で

やがて0になるまで 過ぎてゆく時を数えて

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彼らは銃を構え続け 慎重にワゴンに乗り込む

反動で痺れる指で アイスのようなドアを開け

煙草臭い車内で 攻略法を得意げに話している

窓ガラスが散らばり無音になる その瞬間まで

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