うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.155

 

当てもないのに 何処へゆくの?

返事も無くて 孤独が響く

すれ違った事柄ばかりを考えて

今あるひと時を蔑ろにする

 

子供の頃は どんな風に過ごした?

大人になったら どんな風になりたかった?

そんな問いかけも 意味をなさなくて

今あるひと時だけが 重くのしかかる

 

それでも あの子の言った

言葉の煌めきと 揺らめく矛盾が

それでも あの人の言った

言葉の綻びと 揺るぎない真実が

 

私の瞼を開かせているから 見えている

私の唇を開かせているから 語っている

 

生まれ変われるとしたら何になろう

大空を飛ぶ鳥にでもなってやりたい

もし私が鳥になったら

雲に影を写して 一日中遊んでいる

 

全てやり直せるとしたら何をやろう

ギターを弾けるようになってやりたい

もし私がギターを弾けたら

雲に向かって 一日中鳴いている

 

当てもないのに 何処へ行くの?

その問いかけに 返事が出なくて

すれ違った人々ばかりを数えて

足踏みしたまま 空想に耽る

 

咲き誇れるなら 花になりたい

人知れない場所でひっそりと

触れ合えるのなら 猫になりたい

喉を鳴らして頰を擦り寄せて

 

悲しいことに 当然のように

今あるひと時が 全て本物で

せめて偽物ならと 時計を捨てても

長針と短針は 回り続けている

 

回り続けている そのことばかりを

ただそれだけを頼りに 鼓動が連なっている

No.154 野生

 

抱き合あえば二人は馬鹿らしくなった
こんなものかと落胆して幻想に浸った
触れ合う皮膚はどこまでも冷たく感じ
擦れ合った後には何もないと決め付け

 

男は裸のままジャングルに消えてゆく
女は服を探してデパートに歩いてゆく
愛想の悪い風が髪を飛ばそうとしたら
男は頭を抑え 苦し紛れの言い訳をする

 

疲れ果てたベッドはしわくちゃになり
女がいなくなっても男はしがみ付いた
離れてゆくことは必然だったとしても
愛を終わらせた女が憎くて仕方ない男

 

くだらない冗談を愛していた別の女が
思い出の中だけでこちらに手を振って
後悔を山のように積んでも果実はなく
空腹を誤魔化すように別の女を探した

 

ある日 男が夢見心地から覚めた瞬間に
馬鹿らしくなった心に炎が揺らめいて
予感だけが飛び交い ベッドを整えても
男は結局ジャングルで彷徨うしかない

 

No.153 未遂

 

あの頃の懐かしい音楽がこぼれ落ちて
走馬灯は何よりも彼を優しく包み込む
やがて消えてゆく儚いものだとしても
彼の記憶を持つ者がいることは幸福だ

 

煌めく草原に立つ幼い日の彼の記憶は
彼の脳裏に蘇り 美しく風が吹いている
草臥れたスーツが雨を吸い込む感触を
彼は最後の感触として残そうと考える

 

鳴り響いた銃声に人々が集まって来た
彼はその足音や吐息を愛おしく感じた
雨が降る廃れた街の廃れた連中の気配
黒ずんだ空の下 彼は虚ろに彼らを見た

 

警官たち サイレンの音 救急車 青い服
担架に乗せられると痛みが増してゆく
口元に当てられた酸素マスクを退けて
彼は死なせてくれないかと叫んでいた

 

病室で目を覚ますと晴れた午後だった
チューブで繋がれた自分の身体を見た
彼は彼の中にあった感情を失っていた
ただただ外を見つめ 絶望を感じていた

 

No.152 先輩

 

焦らし過ぎて 飽きてしまい

それでもなお 焦らしたがり

あいつの顔と こいつの顔を

足して割って 引いてかけて

 

足についた 画鋲の傷が

心地良いから 鼻歌歌う

あの子の瞳と あの子の身体

天秤にかけて 身体を捨てる

 

ロッカールームに 足跡二つ

靴底型に 凹んだようで

嫌われている 自覚をすれば

嫌うことなど 造作もなくて

 

だから彼は 皮肉を言った

だから彼は 全てを憎んだ

だから彼は 友人を見捨て

泥で塗り固めた顔で 平然としている

 

我が物顔で廊下を歩く奴らに

食らわせる  視線の弾丸を

借り物の言葉で武装する奴らに

食らわせる  正当な散弾を