うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.204 お題「愛は、時として刃物だ。」

 

 

愛は、時として刃物だ。

真実は、いつも残酷なものだ。

分かり合えないと誓いも揺らいで、

寂しさに隠れたくなり、心を閉ざしたくなる。

 


そして考える。僕らは何を求めているのだろう、と。

明日の朝目覚めて、愛する者が隣にいると、

何故言い切れるだろう? 何故、言い切れないのだろう。

傷付け合うことを恐れるが故に、傷つけ合ってしまう。

 


愛は、時として魔物だ。

秘密は、いつも凄惨なものだ。

分かり合えないことが多過ぎて、

悲しさに浸りたくなり、二匹は擦り減らされる。

 


そして考える。僕らは何のためにいるのだろう、と。

明日の朝目覚めずに、愛する者が横たわり、

何故生き永らえてしまったのか!何故、一匹が残ってしまったのか!

そんな風に引き裂かれることもあり得るのに、何のために?

 


刃物を持った魔物が、二匹並んでいる。

僕らは手を繋ぎ、明日までのカウントダウンを始める。

愛は時として、真実も秘密も潰してしまうスクラップ工場だ。

その時だけは、一匹が二匹でいる意味がはっきりとする。 

 

 

No.203 2018.05.16

 

頭を上手く開いて 中を歯ブラシと洗剤で磨きたい

脳がナイロンのセーターを着ているみたいだ

昨日見た映画の登場人物が夢に出て来た

僕らは四人兄弟で 偽りの家族を演じていたみたいだ

 


両親の浮気 兄と弟の口論 そして粉まみれの殺人

何もかもが記号的なもので 掴めないものだ

それでも確かに ナイロンのセーターを編んだ憂鬱の毛糸は

そんな夢の中にたくさん含まれているように感じた

 


最も印象的だったのは 水の中に顔を浸した男の顔だった

僕は催眠術のようなものでそいつに命令を下した

「銃を向けた二人の女を殺せ!」 簡単な命令だったが

言うことを聞かなかったので顎を殴って気絶させた

 


目覚めた瞬間 分かりきっていたことだが 

身体は言うことを聞かずに布団に沈み込んでいた

アラームが聞こえる 車が走る カーテンに光が差す

僕はこの瞬間 誰かに何かを打ち明けたくてたまらない

 

No.202 男

 

人通りの多い昼の街に

人見知りの男は歩いていた

心が奪われた昨日の夢の中に

車輪に擦れた一昨日の女が出てきた

 

百円で買った飴玉を舐めながら

笑いかけた女を映し出す星は

太陽に照らされて消えてしまった

男は気分が晴れるような気がした

 

要領の良さが 毛嫌いが 一緒に

苦しみが 慈しみが 人間味が 一緒に

  恋というものを 愛というものを

「捉えきれない」という言葉が 一緒に

 

掻き消され 男は進んだ

コンクリートを強く蹴り飛ばして

靴底に小石がめり込んでも 男は走った

そして通りかかった人々にぶつかった

 

人々は点になり 何処かへ消えていった

探していたものが何かわかった

 

だから 男はもう一度 夢を見る

 

夢が覚めることも

心が奪われて 去ってしまうことも

 

知りつつ

 

No.201 女

 

人のいない夜の街に

人影を探して女は歩いていた

心が奪われそうになった午前は

車輪に擦れた午後に殺された

 

百円で買えた時計を合わせて

笑いかけた男を映し出す星は

月に飲まれて消えてしまった

女は吐きそうになって座った

 

遣る瀬無さが 恥じらいが 一緒に

悲しさが 愛おしさが 切なさが 一緒に

  恋というものも 愛というものも

「取るに足らない」という言葉が 一緒に

 

とめどなく流れた 女は崩れた

コンクリートは予想よりも冷たかった

膝に小石がめり込んでも 女は沈んだ

そして通りかかった人影が近付いた

 

人影は二つになり 何処かへ消えていった

探していたものとは程遠かった

 

しかし 女は抱かれて 夢を見る

 

夢が覚めることも

午前が午後に殺されることも

 

知りつつ

 

No.200 兄弟

 

焼き過ぎたパンにバターを塗って

頭がおかしいほどジャムを塗って

朝っぱらから音楽かけて 昼までかけっぱなしで

外まで聞こえるナルシズム 彼は嫌われ者

 


行き過ぎた言動をパターで打って

小さな穴に入ってジャブを打って

朝っぱらから罵詈雑言で 昼まで怒りっぱなしで

外まで聞こえるエゴイズム 彼も嫌われ者

 


だけど彼らは悪びれない

それどころか正義の味方を気取り

最初の彼はパジャマ 次の彼はスーツ

武装をして誰かの攻撃に備える

 


彼らを止められるのは 眠気と病気だけで

周りの人の難聴が進んで行く

彼らを変えられるのは 色気と惚気だけで

周りの人の難破船が進んで行く

 


彼らは兄弟 パジャマとスーツで満足する

自由を生きて 不自由を与える

彼らは兄弟 話を聞かずに語りかける

愉快に生きて 不愉快を与える

 


そんな彼らを 愛する変わり者は

二人に そのまま変わらずにいてくれと言った

そんな彼らを 憎んだ常人たちは

二人に そのまま変わらずにいてくれと言った

 

全く反対の意味で変わることを否定され

レッテルを貼られていることも知らされず

彼らはそのままの形で暮らし続けた

パジャマとスーツを見ると人は指を指した

 

No.199 どうせ

 

どうせ儚いものならば いっそこのまま消えてゆけ

どうせ拙いだけならば いっそこのまま幼子のように

 


軽い気持ちも 重い気持ちも 風船と岩石の 間の気持ちも

楽しい時も 苦しい時も 浮いて沈んで 物語る時も

前向きも 後ろ向きも 上向きも 下向きも

右分けも 左分けも どうせ人なら 人らしくあれ

 


どうせ汚いものならば いっそこのまま染まってゆけ

どうせ醜いものならば いっそこのまま怪人のように

 


海に沈む 夕陽を見て 涙を流す時も 微笑む時も

空を覆う 雨雲を見て 不安な時も 心地良い時も

憐れみも 憎しみも 愛しさも 疑いも

右足でも 左足でも どうせ人なら 人らしく歩け

 


どうせ壊れるものならば いっそそのまま疲れ果て

どうせ一人きりの夢ならば いっそこのまま見続けて

No.198 誰かの愛

 

誰が誰を好むのかなど

誰も気にすることはない

何が何を望むのかなど

何も気にすることはない

 

彼は彼を受け入れるか

彼女が彼女を突き放すか

彼が彼女と手を組むか

彼女が彼を手放すか

 

そんなことなどちっぽけ過ぎて

何の役にも立ちはしない

そんなことなど捨てておけば

何の心配もいらない

 

この頃は 誰かの誰かへの感情が溢れて

僕の目に突き刺さり 心が沈む

愛など信じてはない 永遠などない

そんなことを信じても始まらない

 

誰かを愛することは容易く

誰かを憎むことも容易く

それほど価値のあるものではない

主張しても仕方ない

 

声を荒げる人々に

僕はいつまでも反発することだろう

愛する人々のことを

肯定しながらも 否定することだろう

 

そして僕の心もまた

誰のためにもならない

誰が誰を愛そうが憎もうが

そんなことは問題ではない

 

生きていかなければならない

苦痛は味合わなければならない

目をそらすことは出来ない

誰も逃げられない

 

勝敗など関係ない

死は平等に訪れる

それがとても怖くて

それがとてもとても幸福である