No.597 黄昏る彼!
不規則に並ぶマッチ棒を
規則正しく変えるよりも 集めて捨ててしまいたくなった
1カートン分の退屈を
こんな形で過ごすとは思わなかった
彼はすることを探していた
生きる意味なんてものは初めからなかった
何かをしていれば落ち着くと思った
そして大量のマッチ箱を買って来た
初めはピラミッドやマチュピチュを作り
飽きたらそれを壊す遊びをした
無性に吸いたくなった煙草を節約するために
大掛かりな罠に 自らを落とした
2週間ぶりに見た太陽が
まさしく他人の顔をしていたので
無数のマッチの中から一つ
擦って 煙草に火をつけた
おそらく来週あたりには
銃弾を買ってくることになるだろう
ロシアンルーレットには終わりがある
(それまで思う存分 退屈していよう)
彼の友人が遊びに来ても
彼はマッチ棒の上で黄昏ていた
昼間から 夕日を見るような彼に
友人は 愛想を尽かしていくしかなかった
誰もいなくなった部屋の中で
リボルバーの穴を指でなぞった
彼の退屈は重たくのしかかって
マッチ棒のように 時をメキメキと折った
彼の計画が全て上手くいったところで
友人はどうでも良かった
そんなことよりも 今日も良い天気なので
いつもより少し高い昼食を食べようと思った
友人が彼を思い出すときには
必ず彼は 黄昏ていることだろう
何かに酔うように 遠くの部屋の壁を眺めて
影になったヤシの木が いつまでも揺れている