No.463 初めて魔法を使えた彼!

 

 

灰色の空を一瞬にして虹色に変えた先生が

彼に言った言葉は「なんでもできる」だった

それから彼は帰った後も杖を振り続けた

蛙が鳩になって 窓から飛び出して行った

 


道ゆく人に挨拶をする時 彼は考えた

(あのぼうしを もっとオシャレにしよう!)

杖を振ると 光線は帽子を外れて

気難しい爺さんの家の窓ガラスを割った

 


彼は一目散に逃げて 校門を通り

靴を履き替えて 自分のクラスに行った

今日も先生が水槽の中の金魚を

虹色に変えて 彼にこう言う「あきらめるな」

 


その先生以外の授業は退屈だが 下校時間はすぐに来た

彼は帰り道にバッタを拾って公園に行った

滑り台に乗せて 彼が杖を振ると

バッタはバイクになって 勢い良く走り去った

 


嬉しくなった彼は 母親にそのことを言った

母親は彼を叱り付け バッタを探すように言った

探し終えるまでは夕飯は出て来ない

彼は仕方がなく バイクになったバッタを追いかけた

 


バイクになったバッタは 川に落ちていた

彼が掬い上げても 動かなかった

悲しくて 涙が溢れ 彼はバッタに何度も謝った

箒で飛んで来た母親は 彼の頭を撫でた

 


その日の夕飯には好物ばかりが並んだ

彼は誰かのために 何かをしたくなった

彼がそのことを母親に伝えると 母親はにっこり笑って

「それがまほうというものよ」と言った

 


次の日は学校が休みだった

彼は古い箱を引っ張り出して来た

目を閉じて 神経を集中させて

杖を振り下ろすと 箱は不細工な人形になった

 


大喜びで彼は 母親に人形を持って行った

母親は不思議そうに人形を抱えた

人形が「オオ イトシイ マリー」と言うと

母親は泣き出して 彼をぎゅっと抱きしめた

 


次の週 学校に行くと 先生は言った

「きみは まほうをおぼえたようだね?」

彼は胸を張って 先生に答えた

「せんせいのいうとおりにしたら できました」