No.154 野生

 

抱き合あえば二人は馬鹿らしくなった
こんなものかと落胆して幻想に浸った
触れ合う皮膚はどこまでも冷たく感じ
擦れ合った後には何もないと決め付け

 

男は裸のままジャングルに消えてゆく
女は服を探してデパートに歩いてゆく
愛想の悪い風が髪を飛ばそうとしたら
男は頭を抑え 苦し紛れの言い訳をする

 

疲れ果てたベッドはしわくちゃになり
女がいなくなっても男はしがみ付いた
離れてゆくことは必然だったとしても
愛を終わらせた女が憎くて仕方ない男

 

くだらない冗談を愛していた別の女が
思い出の中だけでこちらに手を振って
後悔を山のように積んでも果実はなく
空腹を誤魔化すように別の女を探した

 

ある日 男が夢見心地から覚めた瞬間に
馬鹿らしくなった心に炎が揺らめいて
予感だけが飛び交い ベッドを整えても
男は結局ジャングルで彷徨うしかない