No.334 螺旋
いつも損ばかりしている男が
得をすることがあれば それは凶兆だ
人は変われるか 変われないかと論争が起きても
これだけは言える 結末は変わらない
例えば 絶対に当たる占いがあるとする
その占いによれば 今日必ず死ぬらしい
男は数える あと数分の命を
そして最期に こちらに銃口を向ける占い師を見る
そんなようなもので
いくら自分で変えようと思っていても
決められたものはもう決まっている
今回の男も それに気付かなかっただけだ
彼の周りの世界は上手く回ってきていた
金も手に入れ 家も車も女も手に入れた
しかし 彼は今までずっと不運だった
生まれも最悪 世間から疎まれてもいた
そんな彼でも ささやかな幸せを享受しても良いと
誰かは言うだろうが そうはいかない
彼は事故で死ぬことになり
苦痛の中 安らぎを求め死を受け入れなければならない
もし結末を知る手段があったなら
彼は愛する女を助手席には乗せなかった
猛スピードで丸焦げになるまで
車を加速させることも無かった
とてつもない無力感の中で 幼き日の彼を思い出しながら
墓の前で泣く 同じような生まれの男もまた
同じような結末を 受け入れるざるを得ない
そして 同じような墓で 同じような誰かに 思い出されるのだろう
その螺旋を抜け出すために
何かをしなければならないが
結局のところ 何をしても 何も変わらない
結末が 彼らを待っているだけなのだから