No.297 無題

 

何かを言い訳しなければならない時

私は誰かを卑しめているのかもしれない

言い訳を言う相手か 言い訳の材料のものか

それは別にしても 私は今日も言い訳を垂れる

 


昔話をしながら 自分の持っていた理想を見る時

なんて無謀で 愚かだったろうと思う

けれども幼さは力となり 岩を砕き 砂に変えた

私は今 その砂で絵を描いたりして遊んでいるのだ

 


画家が死んだ時代だと言い聞かせ

絵を描くことの無意味さを紛らわせても

少しの技量と 計り知れない強運を持つものが

威張り散らしている展覧会を見に行ける

 


詩は誰にも向かれないと言い聞かせ

詩を書くことの曖昧さを滲ませても

少しの感性と 廃れるのが早い病のような流行で

誰かに向かれている大衆の一人を手に取れる

 


言い訳ばかりしている 問題とも思わないほどに

誰かの描いた絵の上に立って

誰かが言った言葉を繰り返すことしか出来ない

それが当たり前なら 芸術は言い訳と言える

 


疑問のないように生きることは

とてもつまらないように思える

疑問のない人々は言い訳もしない

清々しいほど愚かに幸福を享受する