うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.267 解

 

 

私はほつれた糸だけを取るつもりだった

だがスーツはいつまでも吐き出した

眺めていると止められなくなって

やがて小さな穴が空いた

 


革の鞄の中には重要な書類が入っていた

それをゴミ箱に放り込むと

ポケットの財布を出して手に持ち

安い服屋へと入っていった

 


そこには普段着慣れない

紙のようなペラペラした服が飾ってあり

私は試着もしないまま

それを買って 裏路地で着替えた

 


道行く人が私を見た

当然だ 何もかもが合っていない

高層ビルの中では忙しなく働いているのだろう

私も ほつれた糸を発見しなかったらそうしていた

 


レンタカーを借りようとも思ったが

それはつまらな過ぎるのでやめた

どこへ行くかも定かではないバスに乗って

二時間ほど揺られた

 


私は知らない場所へ来た

いや 「来れた」と言った方が正しいだろう

携帯はとっくに捨ててきてしまった

きっと契約は無しになるだろう

 


時々どうしてもこうしたくなってしまう

何も無い 知らない 人もいない

気持ちが良い 清々しい こういう場所で

私はやっと 生と死に向き合えるのだ