うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No265

 

 

彼は私に新車を見せびらかしに来た

車については詳しくない 興味もない

だが彼は車についてあらゆる方法でまくし立てる

仕舞いには 私は無能だと言っていた

 


そして 私たちは車に乗って煙草を吸った

新車の独特なにおいと混ざり合って

毒物のようなにおいになったので

喫煙が出来るカフェに入って話した

 


私は脈絡のないことばかり話したが

彼は他愛のない会話にも意味を求めた

彼にとって車は素晴らしいもので 男は強い

女はくそったれで 乗り心地も悪い

 


私は彼を見下しているが

彼も私を見下している

新車を買った自分を見せに来た彼を

そんな彼に憧れなど持ちようがない私を

 


見下している 彼と私の違いは

自分を愛しているかどうか それがどれだけ凄いことか

私は自分を憎み 無意味に詩を書き 絵を書く

彼は自分の行為を無意味と自覚していない

 


それがどれだけ幸せなことか

愚かさを知らない男ほどタチの悪いものはない

愚かさを知ってしまうとどうなるか

簡単だ 途方もなくつまらなくなる

 


とりあえず私は彼に最後の抵抗をした

所有物はお前の価値を決めない と言った

彼は私を いつものように嘲笑っていた

どちらが負けているかは 一目瞭然だった