うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.246 ハズレの映画

 

 

ダンボールの中に積まれた映画のパンフレットに

ライターのオイルを垂らして火をつけてやりたい気分だ

どうしようもないものを観せられて帰った夜のことだ

その日以外では まぁ良かったものもあるが

 


その日は帰りの電車の中でスーツが羽根を擦り合わせて

ワイシャツとの摩擦で何かしらのメロディを奏でていた

くだらない広告の前に突っ立ってそれを眺めて

「世界で一番努力しているのは俺たちだ」と言いたげだ

 


結婚というものをして 子供が生まれて

何一つ欠けたものがないと思い込んでいる

結婚というものをしているのに 子供がいないので

何一つ残していないと彼らに言われそうだ

 


電車はいつも付きまとう バイクも車も持っていない

免許を取ることには興味が湧かなかった

共通の趣味があるのは羨ましいが

共通の趣味から起こるいざこざの方が気になった

 


もしバイクか車を持っていたら

どうしようもない映画を見たあとでも海に行ける

そうしたら季節外れの曲でも流して

波に浮かんだ月に砂をまぶすことも出来るだろう

 


そうすれば 気分も晴れて

砂をまぶされた波から出て来た人魚と

一夜限りの愛を確かめ合ったあとに

何も残せていない家へと帰れると言うのに