うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.229 一つの瞳

 

 

彼が変色するたびに

周りの人は笑っていた

赤に 紫に 次第に どす黒く

笑みは消え 人は消えた

 


動物が腐りゆく肉を咥え

虫は卵を産み付けて

彼は穏やかに減っていった

やがて白い骨だけになるまで

 


それでも 彼はまだそこに居た

人々を思い返し 動物を 虫を

全ての物事を思い返し

感情を抱かないことに気付いた

 


もはや 彼の心は役割を終え

一つの瞳のようなものになり

ただ 恨みもせず 恐れもせず

やがて風が砂に変えるまで

 


彼は見続けた 自分が何故死んだか

そんなことにはもう興味も湧かず

ただ見続けた 誰かとの約束のように

最後の一欠片が 運ばれてゆくまで