No.204 お題「愛は、時として刃物だ。」
愛は、時として刃物だ。
真実は、いつも残酷なものだ。
分かり合えないと誓いも揺らいで、
寂しさに隠れたくなり、心を閉ざしたくなる。
そして考える。僕らは何を求めているのだろう、と。
明日の朝目覚めて、愛する者が隣にいると、
何故言い切れるだろう? 何故、言い切れないのだろう。
傷付け合うことを恐れるが故に、傷つけ合ってしまう。
愛は、時として魔物だ。
秘密は、いつも凄惨なものだ。
分かり合えないことが多過ぎて、
悲しさに浸りたくなり、二匹は擦り減らされる。
そして考える。僕らは何のためにいるのだろう、と。
明日の朝目覚めずに、愛する者が横たわり、
何故生き永らえてしまったのか!何故、一匹が残ってしまったのか!
そんな風に引き裂かれることもあり得るのに、何のために?
刃物を持った魔物が、二匹並んでいる。
僕らは手を繋ぎ、明日までのカウントダウンを始める。
愛は時として、真実も秘密も潰してしまうスクラップ工場だ。
その時だけは、一匹が二匹でいる意味がはっきりとする。