うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.193 途

 

路上に座る男が意味のない言葉を並べ立てていた

それを隣に座ってメモを取った

「アルコール アンコール アンコールワット アルコールワット…」

ボールペンを止めると 彼はこっちを向いていた

 


立ち上がり逃げようとすると彼も立ち上がり

何処か目的があるような素振りで去って行った

彼のジーンズはかなり汚れていたけれど

上着がやけに綺麗で不思議だった

 


五十歩ほど歩くと また別の男が路上に座っていた

空中に架空の虫を飛ばしているような眼差しだった

彼に道を聞くと「ああ」と言ったきりで

何も返って来ないので隣に座ることにした

 


「あそこへ行きたいのか?本当に?」

彼はこちらを向かず 虫を追いかけながら言った

「はい あそこに知人がいるので」

そう答えると 彼は「俺たちも 知人なのか?」と言った

 


彼に答えることも出来ずに立ち上がると

また彼も立ち上がり 去って行った

きっと虫たちの集まる場所を見つけたのだろう

しばらく歩くと あそこが見えてきた

 


あそこは 此処と呼ぶほどに近くなった

彼らの記憶はもう消えようとしていた

此処になるともはや 何処にいるのかわからなくなってしまった

すると自分の記憶すら消えようとしていた

 


路上に座った メモを取り出して呟いた

「アルコール アンコール アンコールワット アルコールワット」

すると男が隣に座ってメモを取っていた

それを見ると 立ち上がって別の路上へと向かった

 


路上に座った 目の前に虫が現れた

目で追っていると別の男が道を聞いてきた

「ああ」 そう こう言えば良い

後にやるべきことはわかっている そうだ これで良い

 

知人に会うことが出来た

それだけは覚えている

知人は思うより多くて驚いたが

あそこが何処だったのかは思い出せない