うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.191 悪る道

 

陽の光を遮断しておいた部屋の中

肌寒い空気に充満している埃

誰も会う人などなく突っ立ったままで

数を数える 一 二 三 四 …

 


車のキーを無くした

元から車など持っていなかった

充電器を刺し忘れた

元から充電をするものがなかった

 


銃声が聞こえる

銃など持つ人のいない街の中

嬌声も聞こえる

誰も暮らす人のいない上階

 


女が死んだらしい 嬌声が無くなった

男が出て行くらしい 扉が開いて閉まった

ドアにある覗き穴に目を近づけた

男などいない 何もない 風すら吹いていない

 


ルービックキューブを探した

買った覚えもなく 欲しいと思ったこともない

けれど 机の上にそいつは置いてあった

赤の面ばかりを揃えてしまう かちり かちりと

 


陽の光を部屋の中に入れてみた

時計の針が誰かに動かされたのか 

いつのまにか夜になっていた

月の光は目に毒と聞いたので 遮断しておいた

 


また嬌声が聞こえる 女が生き返ったらしい

ゾンビのようなうめき声だ ひたすらに

耳を裂き 鼓膜を焦がす その音を搔き消したくて

ヘッドホンを探した 買った覚えのない 欲しくない そいつを

 


机の上で見つけた 爆音が鼓膜をさらに焦がした

ドラムの音が リズミカルに頭蓋骨を叩いていた

トランペットは合間に脳髄を吸い取った

そこで ソファの存在を思い出した 買った覚えのない……

 


ソファはふかふかだった

思った以上に居心地が良かった

女がまた死んでしまうまで

目を閉じたまま 独り言を話していた

 


あくる日 外に出た ような気がした

道がない あったはずの 道が見えない

人も車も見当たらない 歩き続けても 走り続けても

道などなく ただひたすらに闇が広がる

 


悪はそこから芽生えた 女の嬌声を聞くな

ひたすらに遮断し続けるな 赤の面を揃えるな

月の光は毒というのは 誰かがついた仕様のない嘘だ

闇で歩くな 闇で走るな そこから芽生えて 取り込まれるぞ

 


そんな忠告を聞いた

誰も会う人などいなくなった

そんな忠告を言った

誰かに会う必要などなくなった

 


歩け 歩け ひたすらに歩け

歩き続けて 草臥れ 腐り 朽ち果て 心臓まで錆びつくまで

走れ 走れ ひたすらに走れ

走り続けて 綻び 崩れ ふやけて 精神まで溶かされるまで

 

闇で無闇に 歩け 走れ

あくる日 悪が道を示す その時まで

 

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