うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.187 霧の晴れた街

 

霧の中に立つ男

瞳の中に秘めた想い

煩わしいものから解き放たれた

さて 目指すは霧の晴れた街

 

夢見心地の女が言った

「私と踊って騒ぎましょう」

男は黙って歩いて行った

「黙りこくって気味が悪い」

 

キーが刺さったままの車の方へ

こつり こつり と近付いた

中に置き忘れた手紙があった

開いたドアからそれを取り出した

 

男はその手紙を読んでしまった

その手紙に何が書かれているか

それはさして問題では無い

男は 手紙を最後まで読んでしまったのだ

 

それからというもの

男は霧の中に身を潜めることに決めた

何も言わずに 何も感じずに

通り過ぎる人々を眺めていた

 

霧の晴れた街を忘れようとしても

女の声が耳にこびりついていた

もどかしく感じて右手を掻くと

そこにはどす黒い模様のナイフがあった

 

男はそれを遠くに投げた

それは霧の晴れた街に落ちて 音が鳴った

通り過ぎる人々の数人が霧の方を見た

霧しかなく 何事も無い様子でそいつらはまた歩き始めた

 

雨が降った そしてやんだ

男はもう何処にもいなかった

霧の晴れた街と 霧の境目が消え

全てが太陽に晒され 輝いていた