うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.178 海底の泥船

 

 

見覚えのある社内の風景とは少し違って見えたが
その時の私は 馴染み深いあの場所だと思った

 

社員は新しいのも増えて 私が座っていた椅子は二つに増えていた
見たことのある人もいたが 中には見たことのない人もいた

 

最低賃金のギリギリの海底を進む小さな船の船長は女だった
そいつは週五回ほど見かけたあいつと同じの顔だった

 

私のやっていた仕事を二人でやるのは 勤めていた頃の願いだった
一人で動かすには重すぎる大きな荷台の機械を背負って歩くのは苦痛だ

 

向こうから ひそひそ声で悪口が聞こえた 噂好きなのは変わらないらしかった
それも無理は無い 何故なら私はあの時 忽然と姿を消したのだから

 

あの見慣れた わがままで塗り固めた泥のような顔で 船長は私の話を聞いた
それを遮るように一人の社員は私に 一人の社員は彼女に話しかけた

 

すると何故か やったこともない遊びが始まった
手を交差したり 離したり やったこともないのにルールは知っていた

 

私たちはその遊びをやるうちに解れていった 胸のつかえが嘘のように取れた
私は 明日からまた此処に来るのだろうと思った

 

 


目が覚めると
喪失感が襲い
晴れていた頭のもやは新たに発生して
現実という名の 深く深く
住むものなど何もない
海底を進む船の腹を見上げる場所へと戻り
私は 自分の求める理想の浅はかさに絶望し
頭の中で 何度も 何度も 首を吊った