No.167 洗濯物

 

草臥れたシャツがハンガーにかかる
ベランダにある洗濯機は黙っている
陰気な空で 健気な夢が
わだかまりから 絆され 解けて

 

部屋干し日和 そしてまた一人
数えやすい友人の顔を
ハンガーにかけて 黙ったままで
わかりやすい記憶を探す

 

もしも 借りた部屋の壁に
夕陽に染まる 海の絵を描いたら
ここはどこだ?と 困り果てて
誰かが恋しくなるだろうか

 

もしも 借りた絵本の隅に
黒ずんだインクを 垂らしてしまったら
それは何だ?と 怒鳴り散らす
誰かを憎むのだろうか

 

草臥れた 左半身と
右半身が 器用にハンガーにかかる
左手で紡ぐ言葉と一緒に
右手で紡ぐ言葉まで拙い

 

陰に飲まれながら 陰を飲み込みながら
どこまでも上手に乾いていたい
嘘に溺れながら 嘘を吐き出しながら
どこまでも上手に装っていたい