No.166 街の影

 

煌びやかに彩られている街 着飾る人々
その中に薄汚いコートを着た男が立つ
虚ろな瞳で彼は何を見ているのだろう
それは誰にも知られることのない真実

 

かつての彼は…などと語る人もいない
ぼさぼさの髪を掻き毟りながら独り言
誰に対してというわけでもない悪態に
怪訝そうな顔で人々は彼を通りすがる

 

銅像のように固まっていた足を進めて
彼は小さな映画館の前で座り込んだが
数分も経たぬうちに警官がやって来て
彼を箒で掃くように退かせてしまった

 

馴染みの公園のゴミ箱の中に見つけた
食べかけのハンバーガーに食らいつく
彼の舌は頑丈なビニールのようになり
厚かましいほどに丈夫な腹へ押し込む

 

彼は空を見上げてため息をついてみる
このベンチはベッドの代わりにもなる
誰よりも深い瞳で飛ぶ鳥を眺めている
そんな彼に見惚れている街の影がある