No.160 冬は過ぎて春になる

 

 

愛では語り尽くせない気持ちを
円に近い多角形のような気持ちを
長い長い小説の最後までのページのような気持ちを
そのページをゆったりとめくってゆく気持ちを

 

君に伝えられたら
どれだけ幸福なことだろう
僕は何に関しても遠回りで
やけに難しい言葉ばかり吐いてしまう

 

もっと単純で もっと簡単な言葉
それだけで君の瞳に映る世界を
ハッとさせるくらい明るく出来たなら
そう考えてまた新しい詩を書いている

 

君と読む詩と 君に書く詩
大袈裟でなく 大真面目な詩
この感情を木箱に仕舞っておこう
そして心の奥の箪笥の中に入れよう

 

二人の会話を録音するように
僕は全てを残して置きたくなる
それでも忘れてしまいそうになるから
繰り返し同じ言葉を並べていたい

 

この寒い季節もまた過ぎ去って
暖かい春が風と共にやってくる
晴れた日には何処かへ行こう
雨が降る日は部屋で過ごそう

 

僕は何処へも飛んで行かない
飛んで行くなら君も誘うだろう
ふわふわと浮いて 空の先まで
そこまで行ったら 笑っていられる

 

悲しいことなど数えることはない
苦しいことなど見つめる意味はない
きっと大丈夫と思っていよう
そして僕らは 何度も季節を巡る