No.157 森の人

 

重なり合う光の中で
呼吸する 木漏れ日はいつも優しい
獣の死んだ匂いのする森の中で
何故こんな気持ちになるのだろう

 

焚き火の火が消えている
灰が風に舞っている
少しだけ故郷が恋しくなり
遠くの山をじっと眺める

 

誰の声も聞こえない
自然は そこにあるだけで
こちらに話しかけてくることはない
それでも木々の言葉を探っている

 

そうやって何年も待ち続けている
自分の存在が消えて無くなることを
しかし 生きながらえることでしか
死に近付くことが出来ないでいる

 

この森に佇む一つの塊として
いつか朽ち果てるのを待つ置物として
虫に喰われ 獣に喰われる餌として
そして 人間として生きた証として

 

この身体は今も生きている
消えた焚き火を追いかけるように
この精神は今も変化する
燃えた後の木々が灰になるように