うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.145 徒者

 

眠れない夜に手を合わせて彼は歩いた
燃え盛る街並みと狂気のネオンを眺め
靴音を強調しながら自己暗示をかける
車のクラクションで思い出される光景

 

彼は子供の頃に車に轢かれて骨折した
疼きだした右の足を眺めながら歩いた
野良猫に睨まれて夜明けを待つ宿無し
煙草に火を点ける代わりに財布を渡す

 

雨上がりのアスファルトの感触が固く
彼の靴底を削り取るようにへばり付く
愚かな屑籠の虫に栄養を取らせるため
食べかけのハンバーガーを中に入れた

 

孤独を食い荒らす誘惑に耐えかねたら
彼は狂気のネオンに見惚れてしまった
名前も知らない女を探す夜の憂鬱には
甘美な響きだけがこだまして消えゆく

 

隠れた星の代わりに煙草に火を付けて
自分が雲の製造機だと彼は言い聞かせ
手を繋ぐ儚そうな恋人達の後を尾けて
朝が訪れるまで虚無感と共に過ごした