No.133 変わることのない景色

 

変わることのない景色が彼を閉じ込めている

懐かしさに恋い焦がれ過ぎ去った時を磨いても

輝くのはひと時だけですぐに虚しくなる

忘れ去られた人々はいつも彼の周りを漂い

恨みつらみも無く ただただ報われずに嘆いている

 

そんな彼を愛した人もいた

そんな彼も人を愛していた

変わることのない景色の中で

彼は変わっていった

 

大きな雑音に巻き込まれて押しつぶされそうになって

彼は自分の顔や手の皺を見て最期の時を悟った

変わらない景色の中で老いていった彼に残ったものは

愛し 愛されていたと信じていた心だけだった

そして 変わることのなかった景色はどこまでも真っ白な空間に変わった

 

その真っ白な空間の広さに打ちのめされながら

彼は彼を忘れてしまった人々に嘆いている