No.128 腐りゆく

 

小鳥さえずる向こうの山は


目前の木に雄大さを奪われ


忘れ去られた首吊り死体を


目前の木に影として映す

 

 

移動して来た彼は体を揺らし


小鳥のさえずりに答えようとする


僕は部屋からそれを見て


笑って涼しい午後を過ごす

 

 

鼻をくすぐる腐敗臭が


木の葉の緑にラッピングされて


陽光の強さにうなだれながら


冷房のスイッチを切ってしまう

 

 

すると僕は移動して


彼の体になり替わる


体を腐らせようと必死な太陽が


誰彼かまわず照らし出す

 

 

明るみになった僕の死体は


また雄大さを失った山に引き戻され


束の間に感じた生前の心地よさを


永遠に羨ましがる

 

 

僕が発見される頃には


僕と認識されないだろう


誰彼かまわず照らす太陽が憎くて


少しだけ優しい月を懐かしがる