うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.112 性の船

 

涙も出ないほど悲しい性

夢も見れない苦しい性

妄想の中の抑え切れない性

やがて沈みゆく船のような性

どれも同じ人物の中で
同じように収まる性

コップから溢れそうな水の上を
悲しさや苦しさを
抑え切れない船に乗る

性はまとわりつく衣のようで
汗を吸わない繊維は張り付いて
傷が付いてもすぐに塞がって
寝苦しい夜に締め付けてくる

喉が渇いたように何かを求め
探す当ては目の前の暗闇だけ
石の裏にいる虫のように
いつしか見つかることを恐れ
睨みつける天井はあまりに低く
酸素は少なくなり息も出来ない

性を捨てても楽にはならず
新たな性が糸となり身体を測る
ちょうど良い大きさの布になれば
型の通りに服に変わってゆく

涙もすでに枯れ果てた性

夢の見過ぎで変わり果てた性

妄想の中が溢れ出した性

だんだんと沈んでゆく船のような性

能面のような顔をして
こっちを見る人々が怖いから
一人きりになれる時間を探す
石を裏返す大きな手が見える

悲しさも苦しさも
抑え切れない船は
天井もなくなり 曇り空の下
隠れる石を探して進んで行く