うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.109 鏡面


彼は形容しがたい思いで目を覚ました
どうしようも無いほど身体が動かない
重たくて固くなった身体を引きずって
鏡の前まで行くと彼は愕然としていた

 

何がどうしてこうなってしまったのか
彼の顔や身体は別人になっていたのだ
髭面の見たことのない男になっていた
彼は気が狂ったように叫び声をあげた

 

だがその声は空気を振動させなかった
彼の喉は酒に焼かれているようだった
声は蟻と会話が出来るほどの大きさで
彼は鏡の中の誰かを眺めるだけだった

 

恐る恐る顔に手を伸ばし頬に当てたが
覆面のような皮膚がたるんでいるだけ
元からこんな顔だったように平然とし
絶望した彼は鏡を殴り割ってしまった

 

破片が刺さった拳から血が吹き出たら
彼はその血をすすって涙を流していた
そうやって何年も朝に彼は彼を忘れる
夜には思い出し酒を飲み眠りに就いた