No.99 地面の穴

 

儚く崩れる地面

奈落を覗き込めば

輝く思い出たちが

暗闇を照らしている

 

飛び込めばもう戻れない

時間が止まり動けない

躊躇する間も無く

足は沈み埋もれてゆく

 

駆け出すと地面の穴は

遠く離れていった

振り向くとそれは

ただ陽炎のように揺れて

 

あの暗闇を恋しいと感じて

あの奈落に落ちたいと望んで

時間など止まれば良いと

星空を眺めながら呟いた

 

沈みゆく地面を探して

彷徨う彼は 人形のように

心を何処かに隠して

いつしか忘れ去られた

 

彼は一人きりで歩き

死んだ思い出たちを数えて

地面をひたすら踏み歩き

落ちてしまえと俯いた