うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.85 真空

 

煌めく理想郷そこから突き出る摩天楼
奇しい光を放つ一筋の涙のような流星
それはバラバラになった宇宙船だった
理想郷に囚われた人々は願い事を囁く

 

バラバラになった宇宙船に乗っていた
乗組員の男は宇宙に放り出されて漂う
太陽に近いからか少しだけ暖かく感じ
母の胎内にいるような気分がしている

 

本当ならば危機的な状況だったが男は
ただ今までの人生を振り返って笑った
「くだらない人生 くだらなく終わる」
それで良いと心は宇宙に紛れていった

 

星は親しげに開かれた目のように映り
太陽は最期を照らす蝋燭のように映る
胎児に還るような感覚に包まれてゆき
男は何もかも忘れ涙を流し手を伸ばす

 

すると男の目の前に巨大な影が現れた
死神に似たそれは太陽を遮って近付く
男を救う宇宙船は彼を引きずり戻した
理想郷は別の顔で彼を収容しなおした