うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.83 虚空

 

苦しみたい時には人間を攻撃するのだ
一に対して多数は残酷な力を示すから
楽しみたい時にも人間を攻撃するのだ
多数は一をとても簡単に踏み潰すから

 

黒スーツの大群がまるで蟻に見えたら
電車に乗ると羽を揺らし合う蜂に見え
革の財布で命拾いしている生活やらが
胸ポケットでアラームを鳴らすこの頃

 

ただただ男は空を見上げているだけだ
他に何もせず対面の座席に座りながら
その男の考えることを想像していると
行き着く先に待つ憂鬱を捨てたくなる

 

眺めていた男は同じ駅で降りたようだ
改札から耳慣れた音がしてそれを出た
右に行っても左に行っても時間はある
ハンバーガーでも食べようかと探した

 

眺めていた男も同じことをするらしい
そして窓側の席でやはり空を見ている
男への興味もなくなって食事も終わる
気が付けば 何の気なしに空を見ていた