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うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

No.78 悪友

 

くわえ煙草が似合う気障な男は言った
「悲しいことは全て忘れてしまえ」と
愛想つかして出て行ったあの子にすら
未練は無いようで気ままな一人暮らし

 

くわえ煙草の煙が目にしみた男の口癖
「怪しい奴らに全てを奪われたのさ」
愛されもせずに男は裏路地で午前三時
未練のありそうな顔で一人野垂れ死に

 

二人は友人同士 悪いことも良いことも
幼い頃から同じ場所で同じことをした
慰め合うのはしみったれていると信じ
虚勢を張り続けて最後まで本音を隠し

 

くわえ煙草の一人が死ねば気障な男は
ありふれた女とありふれた婚約をして
身を固めてひっそりと暮らそうとした
世の中に蔓延る乾いた空気から逃げて

 

そんな矢先に男はある事情で殺された
事情を知るもう一人のくわえ煙草すら
この世にはいない 涙を流す女だけ残り
その涙も乾く頃には全て忘れ去られた