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うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

No.77 水面はいつも穏やかに佇み

 

 

詩人は釣り人と似ていると彼は言った
ひたすらに待ち続け
針にかかるのを待つしかない
詩人と釣り人の違いは
釣り上げたものがどんなガラクタでも
それを愛せるか愛せないかだ
詩人はガラクタを愛することが出来る
ガラクタを愛せない詩人はただの釣り人だ
針にかかる獲物が何かを選べるはずもない
釣り上げられたものこそがその価値なのだ

 

そして僕は彼の言葉に感化されて詩を書いた
色々な工夫をしてみた
煌びやかにして目に付く詩を書いたり
どす黒く水に紛れる詩を書いたり
釣り上げられたものは
片手で数えられるほどだった
しかし僕はそれを愛することにした
彼の言う「釣り人」にはなりたくなかった
確かにガラクタが紛れていることもあった
しかし僕は釣り糸を垂らすことをやめなかった

 

そしてある日 自分が詩を書く意味を求めた
途端に釣り糸は切れて針は浮きと流されて行った
その時に僕はこう考えた
(意味などないものこそが詩なのではないか)と
そして僕は新しい釣竿と
新しい釣り糸と新しい浮きと新しい針を買った
そして自分の好きな場所に垂らしてみた
すると釣れなくても楽しいことに気がついた

 

僕は釣り人ではなく詩人になれたと感じた
波紋が新しい詩を頭の中に語りかけていた
そして僕は今自由に詩を書いている
恥ずかしげもなく恥ずかしいことを書いている
彼と同じように何も求めずに
ただひたすらに何かを待ち続けている
詩人は釣り人ではないかも知れないが
永遠に待ち人であり続けるのかも知れないと思う