うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

No.72 石になったガム

 

吐き捨てたガムが
コンクリートに張り付いて石になる
それを見ながら彼は
人を待つことに飽き始めている

 

吹き荒ぶからビルは傾いて見え
傾いているから彼は落ち着く
ポケットにしまったライターを取り出し
煙草に火をつけると涙をこぼす

 

さあ うちに帰ろうか
あてもなく彷徨い歩く日々を終わらせて
彼の家は此処から遠く
電車は一時間に二本しかないけれど

 

煙草を灰皿に落として
水に浸かる音を聞く そして彼は思う
(これが夢ならどれだけ救われるか)
退屈で窮屈な人生のつまらない仮定

 

やっと来た電車の中はからっぽで
しばらくは貸し切りで揺られる
徐々に人が多くなると擦れる雑音で
熱を帯びた脳がストレスを抱く

 

さっき見つめていた
石になったガムが羨ましい
誰もいない静かな場所で
じっとしているだけで良いのだから