No.71 詩人の詩

 

朝早くに小鳥のさえずりが聞こえて
冷えた部屋の床に足をつける
ありふれた日常とありふれた寝不足で
ふらついた思考は時間の波間を漂う

 

おかえりとただいまを同時に言えたなら
僕はこの部屋から出なくて済むのに
電気を付けて寝癖を直しながら
自分の中で何かを殺さなければならない

 

詩人たちは今日も空回りしている
街は穏やかに彼らを包み込む
詩人たちの憂鬱を吸い込んだ空は
今にも壊れそうに青く佇む

 

僕は思ってもいないことを
他人に話さなければならない
いつか帰るべき場所を探して
本心を隠し通さなければならない

 

それに疲れたら一瞬でも忘れて
詩を書いてみるよ それが詩と呼べなくても
誰かに必要とされたいと思っても
詩は書いた途端に僕のものじゃなくなるけれど

 

疑うことや怒ることをやめずにいよう
僕は彼らに追いつけないかも知れないけれど
好きなことを絶えずに続けていれば
いつか小さなものでも遺せると信じて

 

詩人たちは苦しまなければならない
苦しみを詩にしなければならない
そう自分を追い込んで行くと
どこかに消え果てたくなってしまう

 

だから僕は今日も誰かの皮を被って
異星人と話すように誰かと話すだろう
その皮が剥がれ落ちたその時に
僕を理解出来る人は僕の詩を読むだろう