うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

No.67 追憶の手紙

 

雨の音がする
雨の中傘を差して行き交う
人々の足音が聞こえる
目を閉じて
彼女のことをまぶたの裏に映す

 

彼女はとても綺麗だった
何もかも完璧なほど
油断も隙もない女だった
そんな彼女を
失うことは何よりも辛かった

 

蘇る
映画のワンシーン
愛する者を守るため
死んでいった
男の最期の顔

 

私は
老人になるまでこの男に憧れた
そして今ペンを取り
薄汚い文字で
彼女に宛てた手紙を書いている

 

〝美しい君よ
永遠にその心で
誰にも怯えること無く
永遠にその魂で
生き続けよ
私の心は
いつも君のそばにある
この荒んだ人生に
光を与えてくれた
何よりも大切な
何よりも純粋な
愛をくれた
ありがとう
美しい君よ
永遠にその瞳で
私を見つめ返しておくれ___〟

 

彼女はもういない
どこを探しても見つからない
しかし彼女は
引き出しの中に 戸棚の上に
窓辺に 机に並んだ二つの椅子に

 

いつも
映し出せる

 

いつも
蘇る

 

悲しいことに
重要なことを何も話せなかった
何十年も前の記憶が
蘇る
そして

 

私はまたペンを取る

 

〝美しい君よ
愛する君よ
私の心はもう
冷たい牢獄から

二度と出られないだろう____〟