うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

No.66 飴玉


眠ったままに煙草を吸う男が寝返った
布団に火がつき瞬く間に燃え上がった
そして男は目覚めること無く焼死した
そんなホラ話で笑いながら酒を飲んだ

 

家に帰ると灰皿を準備して煙草に火を
つけようとして布団の上に座りながら
日々の憂鬱をめくるめく思い返し始め
ライターを投げ灰皿をどかし横になる

 

彼はその憂鬱の一粒一粒をこねて丸め
飴玉のように舐めてその味を堪能した
彼の頭の中を切り出して吸い出したら
濃厚などす黒い液体が溢れ出すだろう

 

ソファーに身体を預けその重みで沈む
彼は投げたライターを拾って火をつけ
ぼやける蛍光灯を眺めて煙草をくわえ
飴玉を吐き捨てるように煙を生み出す

 

彼は燻製になるほどに煙草を吸い続け
頬を伝う涙の意味を確かめて沈みゆく
悲しみは心の奥の箱に入れて鍵をかけ
苦しみは心の表面に塗りたくってゆく