うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所

No.65 懺悔に似た回顧

…これは現実にあった話を基にしている…


いや
僕の家族はきっと
僕が生まれた後の数年だけが幸福だった

僕には兄がいる
兄は幸福だ
何故なら僕が生まれる前までは
両親のまともな愛を独り占め出来たのだから

僕は一人遊びが好きで
父親
「お前は一人で遊んでしまうから遊び方がわからなかった」
と言っていた
その名残からか
今でも一人で考え事をするのが好きだ

空想の中で僕は魔法使いだった
あるいはドラゴン使いだった
SFやファンタジーに想いを馳せて
母がたまに内職に使う程度の
大きなパソコンのワードに物語を綴った

主人公は
家電量販店のマッサージチェアに座っている
すると向こうから不思議な老人がやってきて
「私と一緒に来い」
と言うのだ
主人公は頼れる者がいないいわゆる孤児で
その老人に導かれるまま魔法学校へ…

そんな話を信じて
そんな話を綴った

僕は夢を見ていたのだ
今も夢を見ているのだろう
父と母はそんな僕の空想を
僕だけのものだと思ってくれていた
だから興味のある本は買ってくれたし
ゲームよりそっちの方が魅力的だった

幼稚園から小学校に上がる頃になると
社会が牙を剥き始めた
本能的に生きていた僕は
学校では問題児扱いだった
泣きながら兄と帰り
「だってムカついたから」
と犯罪者のような台詞を吐いていた

先生はいつも僕を監視した
優しく あるいは厳しく
その先生の思惑の上で僕は転がされた
そして小学三年に上がる時
突然引越しすることを告げられた

転校初日
忘れもしない
僕は何故かわからないが
同級生に首を絞められた
それからと言うもの
転校先が嫌いで仕方なかった

場所が変わっても僕は問題児だ
兄は大人しかったので
僕に腹を立てても許してくれた
今思えば
あの頃の僕は兄に守られていたのかもしれない

きっかけは何かはわからないが
学級閉鎖するほどの異常事態にもなった
同級生に馴染めない僕は
母に「お前のせいだ」と言われた
その時は戸惑ったが
今思えば
そうだったのかも知れない

覚えていることは断片的だし
その頃の空想癖を考えると半分は夢かも知れない
ただその小学校は僕にとって監獄で
毎日投獄されるようなものだった

兄に連れられ兄の友達と良く遊んだ
兄の友達は口々に
「生意気な弟だね」
と話しているのはわかった
我慢させていると自覚したのはその頃だ
しかし僕の行動はさらに過激になった

小学三年と四年の頃に頭を支配したのは
幼稚園の時に母が狂った記憶だった
「狂った」は例えじゃない
精神的に追い詰められ
僕たちは虐待に近いことをされていたのだ

芸能人が夫になると言われ
父について行くか?と本気で聞かれたり
物心もつかない頃に
理屈を捻じ曲げた説教を何時間も聞いた
一番良く思い出すのは
「指しゃぶりをするから」
と言う理由で後ろ手にガムテープを巻かれ
口にまでガムテープを貼られたことだ
その事実を
父が知っているかは僕にはわからない

いずれにしても
めちゃくちゃな毎日だった
小学五年と六年になって
システムをようやく理解してきた
それは父と母が離婚して
父が僕と兄を母から隔離したからだ

父が子供の頃に使っていたらしい
当時 築七十年は過ぎていた平家を引っ越して
祖母の家に近いマンションに住んだ
それからはまさしく男の世界だった

父は夜遅く帰ってきたので
祖母の家で夜ご飯と風呂を済ませ
九時ごろに家に帰るのが当たり前だった
しかし後から聞くと
夜中に出歩いている「問題児」と
保護者たちに白い目で見られていたらしい

僕の何がそんなに問題だったのか?
そんなことはわからない
小学校にはいじめも暴力も存在していた
僕にはそれがくっきりと
重く重くのしかかった
僕もいじめ いじめられ
暴力を振るわれ 暴力を振るった
そんな世界だ
子供は夢を見て
大人の言うことを聞くなど
大人の夢だった

母がいた頃
僕と兄を連れて
車のガソリンがなくなるまで
何処か遠くへ行ったことがある
何処に行き着いたかはわからない
山奥のコンビニで眠った
翌日警察に連れられ
父が迎えに来た
その記憶は不思議なことに
本物か嘘かわからない
そんな不確かな話だが
僕にとっては切実な空想を作り出す
大きな素材 もしくは骨格になった

小学校を卒業する頃には
僕は頭の中で完全な世界を作っていた
それは何をしても許される世界で
現実世界の中学校にはみ出して来た

許されないことを何度もしたし
何か悪いことがあると
まず僕が悪いと決めつけられた
しかし残念なことに
決めつけられた罪は外れてはなかった
僕は坂を転がりだして止まらなくなった鉄球のように
社会の中で孤立する道を選びかねなかった

その道を選ばなかった理由は
父と兄の存在だろう
父と兄は当時頭が良くて
僕が知らないことを全て知っていた
数学が得意で
何でも合理的に考えることが出来た

僕はそんな二人に憧れ
合理的に自分の罪を正当化しようとした
ただ中学三年にもなると
それが限界に達して
とうとう悪いことをするべきじゃないと思い知らされた

母とはたまに会うくらいで
授業参観に来るのは嬉しかった
小学生時代には保護者会にも出ていた
母親失格と烙印を押されて
窮屈な思いもしたはずだろう
しかし母は
僕の見えないところで戦っていた

今思えば
全て僕が元凶かも知れない
厄介者の役立たず
僕はそう自分に言い聞かせた
そしてそれを演じていた
それも事実かも知れない

家族崩壊も学級閉鎖も
友達が出来ないのも
全てが僕の仕業だったのかも知れない
それを僕が望んでいたのか?
それは違う
ただただ寂しさに負けていた
孤独に打ち勝つすべを知らなかった

そのすべを知ったのは
本当の意味での「友人たち」に出会ってからだ
しかし
その友人たちはもう僕の中で死んでしまった
そして
友人たちの中で僕はもう死んでしまった
だから話すべきではないだろう

僕は間違えている
いつもそう思う
何を選択してもどんな道に進んでも
間違えているのだ
だからこそ面白いと感じる
僕は今置かれている状況が切迫すればするほど
もっと間違えてしまいたいと思っている

きっと間違いを正すことよりも
間違えを正しいことだと思えるようになったのだ
正解の道はこの世にはない
あの世に行ってからゆっくり探すことにする

とりあえずこのくらいで
僕の話はよしておこう
最後まで読んでくれた人がいるなら
それが間違いだと思わないことを願うだけだ