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うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

No.56 鍛造

 

「おめえさんの言うこたぁちと難しい
頭こねくり回さなくても良いだろう?
おめえさんのためを思って刀繕ったが
死に急ぐこたぁない此処で暮らせよ」

 

頭を丸めて何十年か経ったであろうか
親父の言うことには一理あるが彼には
やらねばならない復讐が付きまとって
死神さえもそっぽを向いた無鉄砲さだ

 

やられればやり返すのが世の常だとは
あまりにも物騒な考え方だったのだが
彼はそれを心情に叩き込んでこの年月
一日一日を数えて生きて来たのだった

 

「あんたの気持ちはとても嬉しいがな
背に腹はかえられないのは承知の上だ
帰るとこも無く飼える馬も無く死ぬが
それで本望だから仕方ないことでさ」

 

親父は寂しそうに彼を見送っていたが
それから数日経つとケロッとしている
彼が死んだか生きているかは知らない
刀が鞘に収まればもう関係の無いこと