うたもち現代詩

詩を書き連ねる場所。

No.52 ミア・ウタモチ

物言わぬロボット

私の恋人だ

名前はミア・ウタモチ

パルプフィクションから拝借した名前だ

 

彼女の外観は黒髪のショート

スレンダーで統率の取れた体型

当たり前のことだが歩くのはぎこちない

人肌の感触のゴムを使っている

 

私はこのロボットを完成させるのに

20年の時を費やして来た

壊れにくく丈夫で

老後の介護のことも視野に入れて設計した

 

彼女は体が膨れて

ベッド代わりになったり

変形して車になり

電気を蓄えれば走れるようになる

 

彼女は至ってシンプルな思考を持って

私の要求に応える

「物を取れ」と言えば

物を取ることしかしない

 

この前彼女と街中を歩いていると

失礼な若者がシャッターを押した

そのシャッター音に気がついた彼女は

少しだけ悲しそうな顔をした

 

プログラムされていないはずの

「ロボットである自覚」と「恥」が

突然に生まれたのだろうか?

そう思ったが単なる光の当たり具合だった

 

人間(この場合はロボットだが)は

光の当たり具合で違う表情が出る

彼女に当たったフラッシュが

私の見ている角度に反射すると切なげに見えただけだ

 

彼女の左手は私の右手をしっかり掴む

人肌と同じように温度を設定している

少し寒かったので

43度ほどにあげるとカイロ代わりになる

 

彼女はずっと私に付いてくれるが

ふと考えてしまった

(彼女との子供は…)

そこまで考えて思考を停止した

 

ロボットに対する愛情と人間に対する愛情を

履き違えればただの狂人だ

私は三日三晩考えた

そして彼女を壊してしまうことにした

 

そう 私はミアをすでに愛していたのだ

他の何者でもない人間として または狂人として